入門編「メディアアート」「メディアアーティスト」について分かりやすく解説!

入門編「メディアアート」「メディアアーティスト」について分かりやすく解説!

東京駅のプロジェクションマッピング、Perfumeのライブ、リオ・オリンピック閉会式など、気付けば「メディアアート」という言葉を耳にする機会が、最近増えたように思います。ですが、実際には「メディアアートってなに?」と思っている人も、多いのではないでしょうか?
そこで今回は、「メディアアート」「メディアアーティスト」について、ポイントを分かりやすく解説していきたいと思います。

「メディアアート」とは?他のアートとの違いはあるの?

メディアアートは、「コンピューター、その他の電子機器などを利用した芸術」と言われています。
アートといえば、絵画や彫刻といった伝統的な表現方法の芸術作品を、思い浮かべる人も多いでしょう。ですが芸術の分野でも、科学技術の発展と共に、1980年代からテクノロジーを取り入れた、新たな媒体(メディア)による芸術表現が生み出されました。メディアアートは、それらの「新たな媒体(メディア)を用いた芸術の総称」としても使われています。

1-1.「メディアアート」の表現方法

「コンピューター、その他の電子機器などを利用した芸術」や「新たな媒体(メディア)を用いた芸術の総称」がメディアアートとお伝えしましたが、いまひとつピンとこない人も多いでしょう。
メディアアートと呼ばれる領域は広く、表現方法もさまざまです。そこで現在、目にすることが多いメディアアートを3つ紹介したいと思います。

1-1-1.インスタレーションアート

インスタレーション(installation)とは、現代美術における表現方法の一つです。
空間にアート作品を「設置(install)」することを言い、床、壁、天井など空間を構成する全てを、作品として演出しています。
なかでも、メディアアートにおけるインスタレーションアートは、音や映像、光など、空間の環境面の演出を手掛ける作品が多いです。演出された空間にて作品を鑑賞することで、視覚だけではなく五感を通して作品を鑑賞できます。
実際にインスタレーションアートを体験してみると、作品への没入感がとても高く、作品鑑賞というより作品体験といった方がしっくりきますね!

1-1-2.インターネットアート

インターネットアートは、インターネットを主な媒体(メディア)とする表現方法です。
インターネットアートが始まった90年代中頃は、WEBサイトでのテキストベースの作品が多かったのですが、インターネット技術の進化に伴い、画像や動画など表現の幅が広がりました。今ではアプリケーションやSNSへの投稿など、数多くの作品が生み出されています。

スマートフォンの普及に伴い、インターネットへアクセスする環境を確保できれば、多くの人がその場で瞬時に作品にアクセスできるようになりました。
制作者にとって作品を発表する機会が昔に比べて増えたことや、鑑賞者が作品に対して容易に反応できることなど、制作者と鑑賞者の距離が縮まったように感じますね。

1-1-3.インタラクティブアート

インタラクティブアート(interactive art)とは、鑑賞者が作品に参加することで相互作用的(interactive)な作品が作られていく、という表現方法です。
作品に参加をする方法は様々あり、60年代の作品では、鑑賞者の動きによって変化する迷路、などもありました。
現代では、作品に参加する為のデバイスを用いたり、鑑賞者の動きや熱をセンサーなどで感知したりして、作品への相互作用をもたらします。

インタラクティブアートは、完成されたものを展示される絵画などとは異なり、作品を鑑賞した自分の動きによって作品が変化していきます。このようなインタラクティブな体験は、自分自身も作品の一部であり、作品を作り出していくような感覚を味わえ、より深く作品を理解できますね。

1-2.「メディアアート」の特徴

メディアアートの、主だった3つの特徴を紹介します。

1-2-1.「装置」を使った表現

絵画や彫刻といった伝統的な芸術作品は、自身の頭で考え、自身の手で「道具」を使って作り出されていました。
一方、メディアアートは、自身の頭で考えるところは同じですが、コンピューターなどのテクノロジーを使い、人間にはできないことを実現して、作品を作り出しているといえるでしょう。このように機械を通過して、芸術作品が生みだされるため、メディアアートは「装置」を使った表現と言われています。

1-2-2. 「不安定」なメディア

メディアアートは、デジタルテクノロジーの発展と密接な関係にあります。
デジタルと聞くと、絵画や彫刻など壊れてしまったら復元しづらい芸術作品よりも、保存、復元、複製しやすく、安定しているように感じるかもしれません。
ですが実際は、現時点の最先端の技術を駆使して作品を生み出しても、数年後にはその技術が廃れてしまい、作品が動かなくなる可能性も往々にしてあります。コンピューターのOSのアップデート頻度を考えると、確かに作品の存続性の「不安定さ」を感じます。

 1-2-3. 「マルチメディア」なアート

アートの表現の歴史を辿ると、絵画の様に、はじめは「視覚」を中心とした表現があり、次に「聴覚」の表現が加わりました。
そして現在のメディアアートでは、「触覚」をどう表現するかが注目されています。
確かにゲーム業界でも、「視覚」「聴覚」「触覚」の順に、表現の幅が広がっていっています。人の動きに反応して、変化をするインタラクティブアートは、まさに「マルチメディア」なアートだと言えます。

「メディアアーティスト」ってどんな人?

ここまでの説明で、メディアアートはテクノロジーを利用し、作品を五感で体験することも出来て、従来の伝統的な作品に比べ、表現の幅の広いアートであることが分かりました。 
ではメディアアートを作り出せる「メディアアーティスト」には、一体どんなスキルが必要なのでしょうか?

2-1.「メディアアーティスト」に必要なスキル

メディアアートを生み出すためには、人の琴線に触れられる「芸術面」のセンスと知識、最先端のテクノロジーを扱えるプログラミングなど「工学面」の知識と技術力、が必要となります。
そして何より、表現したいモノのイメージや、アイデアを生み出す発想力が必要です。
ただ、難しいものを作るというよりは、言葉にできない創作意欲を自分の身近なテクノロジーを使って、ものづくりを楽しむ姿勢が大切です。

またメディアアートは表現の幅が広く、一人だけの技術やアイデアで表現しきれない為、チームで作品を作り上げていくことも多い様子。
何十時間も同じ作業を繰り返したり、安全面を考慮する調整など、膨大に時間がかかることもよくあります。
ですので、作品制作をプロジェクトとしてまとめていく、マネジメント能力も必要とされるでしょう。

言葉で表現できないアートな部分と、再現性を求める工学的技術部分。
一見相反する領域ですが、両方が合わさって織りなし生み出されるからこそ、多くの人を魅了してやまないのかもしれません。

「メディアアーティスト」として活躍する有名人

メディアアーティストとして活躍している人は、世界に数多く存在します。今回は日本人で活躍されている方を5名ご紹介いたします。

3-1.真鍋大度

メディアーティスト/プログラマー/デザイナー/映像作家/DJ/VJ
日本を代表するメディアアーティストの一人。
デジタライズされたPerfumeのライブ演出や、リオ・オリンピックの閉会式セレモニーなど、人が今までに見たことのないものを、常に世に生み出し続けるクリエイターです。NIKEのシューズ「NIKE FREE RUN+」のプロモーションにおいて、「靴を楽器にする」といった作品を、皆さんもご覧になったことがあるのではないでしょうか?2014年にはAppleが選ぶ重大な影響を与えた先駆者クリエイター11名に選出されており、世界的に高い評価を得ています。

3-2.岩井俊雄

メディアアーティスト/映像作家/絵本作家
メディアアートのパイオニア的存在。奏でたピアノの音が、映像として視覚化されるインタラクティブアート「映像装置としてのピアノ」は、坂本龍一氏とのコラボレーションしたことでも有名です。
子供向けTV番組「ウゴグゴルーガ」のCGシステム制作やキャラクターデザイン、三鷹の森ジブリ美術館の展示「トトロぴょんぴょん」などでも知られており、現在は絵本作家としても活躍されています。

3-3.落合陽一

メディアアーティスト/科学者/実業家/随筆家/写真家/マルチタレント
「現代の魔法使い」と称されるほど、メディアアートだけではなく幅広い作品や、研究を発表されています。アーティストステイトメントは「物化する計算機自然と対峙し、質量と映像の間にある憧憬や情念を反芻する」。コンピューターと、人間や自然といった非コンピュータリソースが親和することで、再構築される未来の世界像「デジタルネイチャー(計算機自然)」を提唱し、アナログとデジタルのテクノロジーを混在させた作品を発表されているようです。
落合さん自身が、アートステイトメントの分かりやすい作品として、挙げていた県北芸術祭アーカイブ作品をみると、未来的な表現の中にノスタルジックさを感じますね。

3-4.市原えつこ

メディアアーティスト/妄想インベンター
日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き,テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作されています。
巫女姿がトレードマークである市原さんの作品はユニークなものが多く、代表作品に家庭用ロボットに死者の痕跡を宿らせ49日間共生する「デジタルシャーマン・プロジェクト」や、都会の悪い子を叱る『都市のナマハゲ──Namahage in Tokyo』などがあります。

3-5.浅井宣通

メディアアーティスト/クリエイティブディレクター/テクニカルディレクター
顔にCG映像を投影するフェイスマッピングアートのトップランナー。2014年にリアルタイム・フェイストラッキング・プロジェクションマッピング”OMOTE”を発表し、話題を呼びました。
2016年のグラミー賞でのレディー・ガガへのフェイスマッピング、intelのグローバルプロモーション「Connected Colors」など、世界的にも有名。また、SFアニメ映画「攻殻機動隊新劇場版Virtual Reality Diver」にてクリエイティブディレクターも務めるなど、幅広い活躍をされています。

「メディアアート」を手掛けるクリエイティブ集団

メディアアーティストとして個人で有名な人もいれば、企業でメディアアートを取り組んでいる集団も存在します。

4-1.teamLab(チームラボ) / チームラボ株式会社

猪子寿之氏が率いるプログラマー、エンジニア、建築家、CGアニメーターなどからなるウルトラテクノロジスト集団。
デジタル技術を用いて光や音、映像を操り、幻想的で没入感の高いインスタレーションアートなど、デジタルコンテンツの制作を行っています。東京・豊洲「チームラボプラネッツ」や上海「teamLab Borderless Shanghai」など、常設や、常設に近い期間で楽しめるアート空間体験施設も、国内外に多く存在し、世界的に高い評価を受けています。メディアアートが一般に広く認知されたのはteamLabの貢献が大きいといえるでしょう。

4-2.Rhizomatiks(ライゾマティクス) / 株式会社アブストラクトエンジン

Rhizomatiksは、メディアアーティストでもご紹介した真鍋大度氏と石橋素氏が主宰の、世界的に活躍するクリエイティブ集団。株式会社アブストラクトエンジンの「技術と表現の新しい可能性を探求し、研究開発要素の強い実験的なプロジェクトを中心に扱う部門」。テクノロジーと表現の、新しい可能性を常に探求し、数多くの実験的なプロジェクトや、アスリートやミュージシャン、伝統芸能の演者や科学研究者など、多様な表現者や専門家とのコラボレーションを意欲的に行い続けています。

「メディアアート」に出会える場所は?

5-1.NTTインターコミュニケーション・センター(ICC) 場所:東京

NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)https://www.ntticc.or.jp/ja/
サイエンステクノロジーとアートの対話、コミュニケーションをテーマに、メディアアート作品を紹介する文化施設。NTT東日本が運営。
バーチャル・リアリティやインタラクティブ技術などの、最先端テクノロジーを使ったメディアアート作品などを体験できます。年度毎開催の常設展示「オープン・スペース」は、メディアアートの代表的な作品、最先端技術を取り入れた作品、研究機関で進行中のプロジェクトなど、作品の解説と共に展示されており、観覧料は無料。さまざまなメディアーティスト作品に出会え、ワークショップなども開催しているので、メディアアートを学ぶ場所として最適です。

5-2.teamLab★ 場所:東京、福岡、徳島など国内多数

teamLabhttps://www.teamlab.art/jp/e/
「メディアアート」を手掛けるクリエイティブ集団、でも取り上げたteamLabが手掛ける展示空間施設。代表的な施設は「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」です。
広い建物の中を裸足で歩いていき、まさに五感で楽しむインタラクティブアートミュージアム。teamLabの作品の特徴である鮮やかで、幾重にも反射している演出空間は、まるで万華鏡の世界に入っていたように幻想的。
どの作品も没入感が高く、一度体験すると高い高揚感と満足感とが得られ、他の施設も体験してみたくなりますね。また東京だけではなく、途方都市での展示も多く行っているので、是非WEBサイトで近くの施設を探して体験してみてください。

5-3.日本科学未来館 場所:東京

日本科学未来館https://www.miraikan.jst.go.jp/
日本科学未来館は、先端の科学技術と人とをつなぐサイエンスミュージアム。最新のサイエンステクノロジーを、科学コミュニケーターと呼ばれるスタッフが、分かりやすく説明や、実演を交えた展示が行われています。アンドロイドの展示や、国際宇宙ステーション、超高精細3D映像を使用したプラネタリウムなど見ごたえたっぷりの施設です。子供の、科学への好奇心を刺激する場所としても、おススメです。

5-4.文化庁メディア芸術祭 場所:東京(一部オンライン)

文化庁メディア芸術祭https://j-mediaarts.jp/
1997年から毎年実施されている、文化庁主催のメディア芸術の祭典。文化庁が示す「メディア芸術」とは、デジタル技術等を用いて作られたアート作品,エンターテインメント作品,アニメーション作品及びマンガ作品であり、多くの才能あふれるクリエイターの作品に出合うことが出来ます。
3.「メディアアーティスト」として活躍する有名人でご紹介した、メディアアーティストの方々の多くが、文化庁メディア芸術祭で受賞していますので、過去の受賞作品を見てみるのも楽しいでしょう。

5-5.Media Ambition Tokyo 場所:東京(一部オンライン)

Media Ambition Tokyohttps://mediaambitiontokyo.jp/
2013年から毎年開催されているテクノロジーアートの祭典。米国発のテックカルチャー・メディアである「WIRED」の「WIRED」日本版がメディアスポンサーとして参加しています。最先端のテクノロジーカルチャーを実験的なアプローチで都市実装するリアルショーケースで、世界で活躍するアーティスト、さまざまな分野のイノベーターや、企業が創造する最先端のアートや映像、音楽、パフォーマンス、トークショーが行われます。
3.「メディアアーティスト」として活躍する有名人でご紹介した、メディアアーティストの方々も参加アーティストとして常連であり、彼らの最新の作品を体験するのに最適です。これまで開催したMedia Ambition Tokyoの作品アーカイブもWEBサイトに残っているので是非チェックしてみてください。

如何でしたでしょうか?
メディアアートとは、「コンピューター、その他の電子機器などを利用した芸術」かつ、「新たな媒体(メディア)を用いた芸術の総称」ということでした。実際にメディアアートの作品は、私たちが今まで見たことも体験したこともない表現をしているものが多く作品を鑑賞すると、自分の知らない未来の様子を見るかのようで、ワクワクしますね!どんな作品が生み出されていくのか、今後もレポートしていきます。