空間デザイナーとは?知っておきたい空間デザインという職業

「空間デザイナー」になるには?知っておきたい「空間デザイン」という職業

フラッと立ち寄ったカフェなど、皆さんも「この空間、素敵!」と感じる心地の良い体験をしたことはないでしょうか?
それらの多くは、「空間デザイナー」によってつくられたものです。世の中には素敵な空間が溢れており、「自分も空間デザイナーになって、素敵な空間を作りたい!」と思われる方もいるでしょう。
しかし、あまりよく知られていない「空間デザイナー」という仕事。まずは、「空間デザイン」の定義について、詳しく説明していきたいと思います。

空間デザインとは?インテリアデザインとは異なるの?

「空間デザイン」とは、言葉の通り「空間」を「デザイン」することです。2D(2次元)を扱うグラフィックデザインなどとは異なり、奥行きのある3D(3次元)空間を扱います。
室内外については問いません。

「インテリアデザイン」とは、主に室内を扱う装飾を意味しており、空間デザインの一種となります。
また現代ではバーチャル空間も、空間デザインの対象といえるでしょう。

「デザイン」の意味は、“設計、図案、意匠。製品の機能や美的造形を考慮した意匠計画”(引用:Oxford Languages)とあります。
よって「空間デザイン」とは、『3次元空間を扱い、機能面や造形美を追求した計画案をつくること』とも言えます。

空間デザインの仕事ってどんな内容?

では、実際に「空間デザイン」の仕事とは、どういったことが挙げられるのでしょうか?
空間の中でも扱う領域によって、デザインの目的が少し異なっているようです。
大きく3つに分けた領域で、「空間デザイン」の仕事を説明していきます。

2-1. 住空間のデザイン(戸建て、マンション、別荘など)

人が日常的に住む「住空間」では、「居心地の良さ」を目的とした、空間づくりが行われます。
ですが居住者によって、希望する「居心地の良さ」は異なるものです。
その為デザイナーは、居住者の求める日常空間とは、どういったものなのかを理解した上での、提案を求められます。

2-2. 商空間のデザイン(商業施設、文化施設、店舗、展示会、ディスプレイなど)

商いを営む「商空間」では、「集客演出」を目的とした、空間づくりが行われます。
デザイナーは、事業者が顧客を呼び込むために必要と考える空間を、ブランドコンセプトなどマーケティング要素も考慮し、提案する必要があります。

2-3. エンターテインメント空間のデザイン(テーマパーク、イベント、舞台など)

人々を楽しませる「エンターテインメント空間」は、「商空間」の一種です。
そのため、「集客演出」を目的としますが、娯楽性がより高く、「体験演出」を重視した空間となっています。
感情を揺さぶる演出を求められるため、デザイナーは、より芸術性の高い表現力が必要です。

3つの領域にわけて説明しましたが、実際の仕事では、領域が明確に線引きされているわけではありません。
たとえばホテルは、「住空間」と「商空間」のどちらの領域ともいえます。

「空間デザイン」の仕事において重要なことは、デザインの依頼主と関係性を高め、まずは求められていることを正しく理解することです。
そして目的を意識し、今より価値のある空間となる提案を行いましょう。

どんな人を「空間デザイナー」と呼べる?

では、どんな人を「空間デザイナー」と呼べるのでしょうか?
正直なところ、「空間」に関わるデザインを行っていれば、「空間デザイナー」と呼んでも問題はないでしょう。

建築家もそうですし、インテリアデザイナー、照明デザイナー、ディスプレイデザイナー、ランドスケープデザイナー、ステージデザイナー、美術デザイナーなども「空間デザイナー」です。
「空間」の扱いが幅広いため、デザインの専門性も多岐にわたります。

最近では、リアルな素材で空間をつくるのではなく、映像などデジタルコンテンツを用いて空間を演出することも増えてきました。
例えば、teamLab(チームラボ株式会社)が手掛ける演出空間では、デジタルコンテンツを使って、幻想的なアート空間に観客を引き込んでいきます。このようにデジタルコンテンツでなければ、演出できない領域も広がりつつあり、今後デジタル手法を用いた空間デザイナーも増えていくでしょう。

「空間デザイナー」として有名な人って?

現在活躍している「空間デザイナー」で有名な人を、3名紹介いたします。
実際の仕事は空間だけを専門としているのではなく、プロダクトやグラフィックなど幅広く活躍されている方が、殆どのようです。

4-1. 片山正通 / インテリアデザイナー

片山正通 /インテリアデザイナー
「Wonderwall」 https://wonder-wall.com

日本を拠点にグローバルな活躍をされている片山正通さん。代表を務められている「Wonderwall」のHPを見ても、日本を含む、世界で手掛けられた作品数の多さに圧倒されます。
ユニクロ(UNIQLO)の海外旗艦店、BAPE STORE®などのアパレルショップから、ザ・リッツカールトン香港メインバーラウンジまで手掛けており、特に空間におけるブランディング構築を強みとされているようです。
2011年からは、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科の教授も務められています。

4-2. 佐藤オオキ / デザイナー、建築家

佐藤オオキ / デザイナー、建築家
デザインオフィス「nendo」 https://www.nendo.jp/

東京2020オリンピックの聖火台デザインを担当された佐藤オオキさん。建築、インテリア、プロダクト、グラフィックと幅広い領域で活躍されている、日本を代表するデザイナーの一人。
イタリアのブランド家具「Cappellini」から発表されたスツール「ribbon」や、スターバックスとコラボしたラテマグカップなど、空間のデザインだけでなく、手掛けたプロダクトも有名です。

空間デザインの代表作は、「インテリアを化粧する」をコンセプトに作られた「Shiseido The Store」。化粧品会社である資生堂の総合美容施設です。
繊細なタッチのデザインから、ユーモアと機能性を融合させたデザインなど、デザイン表現力に幅があります。

4-3. 長谷川喜美 / 空間デザイナー

「ベルベッタ・デザイン」 https://www.velveta.jp/

「空間をデザインする」をコンセプトに、イルミネーションやイベントディスプレイ、インテリア、プロダクトデザインなどで活躍されています。代表的なものは、「善光寺イルミネーション-希望の光-」、丸の内「Blooming Anniversary~花で彩るクリスマス~」、グランフロント大阪「WINTER IN RED」など、街を歩いている時に目にしていたものばかりです。
シーズナルのイルミネーションデザインは、ストーリー性など、より演出力がもとめられます。長谷川喜美さんの作品は、大胆な構図と、華やかさで見る人の心を動かし、魅了するものばかりです。

「空間デザイナー」を仕事にするには?どんな働き方がある?

空間デザイナーとして働きたい!といっても、一体どうやってその仕事に就くのでしょうか?
考えられる方法を、いくつか紹介いたします。

5-1. 独立開業して働く

「空間デザイナー」という肩書でキャリアをスタートさせるには、自身で開業する他にないでしょう。ですが、すぐに自分の望むような、空間デザインの仕事をできるかどうかは、また別の問題です。「空間デザイナー」として名指しで仕事を受けるには、何らかの実績が必要となります。

5-2. 個人デザイン事務所(アトリエ系事務所)で働く

その次に考えられるのは、 4.「空間デザイナー」として有名な人って?でも取り上げたような、空間デザインを主に扱っている個人デザイン事務所(アトリエ系事務所)で働くことです。

個人デザイン事務所とは、個人のデザイナーが主宰する事務所です。その主宰となるデザイナーのデザイン性を、強く反映したものが作品として出来上がります。規模としては、少人数の組織であることが殆どですので、任せられる仕事の幅は大きいですが、反面、負担も大きいことが多いです。
自分の尊敬するデザイナーのもとで、働きながら学びたい!という人には良いでしょう。ですが、企業の様に門戸が開かれた世界ではないので、自身で事務所に連絡をとり、自分を売り込むアグレッシブさが求められます。

5-3. 空間デザインを扱う一般企業で働く

将来的に「空間デザイナー」になることを目標に、空間デザインを扱う一般企業で働く、というのが実際は多いでしょう。ですが、はじめから空間デザインの仕事をメインとして行えるわけではなく、仕事の中の一つとして、「空間を扱う仕事がある」あたりからのスタートであることが多いです。

また、2. 空間デザインの仕事ってどんな内容?でも説明しました通り、その企業がどの領域を扱っているかで、クライアントの種類(個人もしくは企業)や、デザイン内容が異なってきます。
希望する企業が、どの領域を扱っているかは、企業サイトや就職サイトで確認することが出来ますので、是非チェックをしてみましょう。求人があれば、採用サイトより応募が可能です。

企業で働きたい場合は?業界や会社が知りたい!

「空間」は広義としての意味で捉えられるため、「空間」を事業で扱う業界も、同様に幅広いです。
今回、紹介する業界や企業はごく一部となりますので、働くことを希望される方は、下記内容に加えてより広く調べることをおススメします。

6-1. 住宅・インテリア業界(ハウスメーカー、家具メーカー、照明メーカーなど)

住空間をデザインする業界で、主に個人住宅を扱うハウスメーカーや、インテリアを扱う家具メーカーなどがあります。家や家具のデザイン設計や、インテリアコーディネート、照明プランナーなどで、空間デザイナーとしての需要があります。

  • ハウスメーカー - 大和ハウス工業/積水ハウス/住友林業/三井ホーム/旭化成ホームズなど
  • 家具メーカー – ニトリ/良品計画/オリバー/総合家具/オカムラなど
  • 照明メーカー – ENDO/KOIZUMI/DIKO/ODELICなど

6-2. 不動産業界(不動産ディベロッパー、鉄道系ディベロッパーなど)

住空間と商空間をデザインする業界です。ディベロッパーは、仕入れた土地を住居や商業施設などに開発し、販売、管理する事業を行います。その為、インハウスデザイナーとして、自社事業の住宅や商業施設などのデザイン設計や、インテリアデザインなどで、空間デザイナーとしての需要があります。
関連会社で、デザイン設計事務所を抱えているところや、個人デザイン事務所にデザイン業務を外注する場合も多々ありますので、確認をおこないましょう。

  • 不動産ディベロッパー – 三井不動産/三菱地所/住友不動産/野村不動産など
  • 鉄道系ディベロッパー – 東急不動産/阪急阪神不動産/JR西日本不動産開発など
  • その他のディベロッパー – NTT都市開発/森ビルなど

6-3. 内装・ディスプレイ・イベント業界

主に、商空間とエンターテイメント空間をデザインする業界です。演出デザインが多い業界でもあります。
商業施設の店舗内装から、イベント会場、展示会のディスプレイ、エンターテイメント施設の内装まで、幅広く手掛けます。どの企業も、それぞれ強い分野はありますが、基本的にはどの分野も取り扱います。

乃村工藝社/丹青社/スペース/船場/TOW/フジヤ/博展/中村展設/ムラヤマなど

持っておいた方が良い資格はあるの?

「空間デザイナー」になるために、持っていた方が良い資格はあるのか?ということですが、2021年現在、残念ながら「空間デザイナー」という資格は存在しません。
ですが空間を扱う能力や、知識があると認められる資格は、いくつか存在します。そして資格には2種類あり、国や自治体から認められた「国家資格」と、公益法人や民間団体が認めた「民間資格」です。

資格をもっているから仕事が舞い込むかというと、そうではありません。
ですが、企業に就職する場合など、資格を持っていることで優遇されることはあります。どのような知識と資格を求められているか確認してから、取得の計画を立てましょう。また受験資格や資格登録に、学歴や実務経験を問われることも多いので、必ず試験要項を確認しましょう。

7-1. 建築士 / 国家資格 国土交通省 認定

資格試験運営「建築技術教育普及センター」https://www.jaeic.or.jp/

インテリアだけでなく、建築物のデザインや設計も手掛けたい場合に必要です。
資格は3種類あり、「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」。扱う建築物の規模や構造によって、必要となる資格が異なります。

試験は、一次試験で学科試験、二次試験で製図試験に合格する必要があります。学科試験を合格したのち、製図試験に受かるまでの猶予は5年あります。
長期的に、資格取得に取り組む人が殆どで、難易度は高い試験です。

7-2. インテリアプランナー / 民間資格 「建築技術教育普及センター」認定

財団法人 「建築技術教育普及センター」https://www.jaeic.or.jp/
一般財団法人 日本インテリアプランナー協会 http://jipa-official.org/

インテリアプランナーは、インテリアの企画や設計、工事監理などを行う専門家の資格です。
資格は2種類あり、「インテリアプランナー」と「アソシエイト・インテリアプランナー」です。
建築士同様、試験は一次試験の学科試験と、二次試験の製図試験がありますが、インテリアプランナーは学科を合格し、登録した時点で「アソシエイト・インテリアプランナー」と名乗ることができます。

こちらは国家資格ではなく、民間資格ですが、昔は建築士と同じく国土交通省管轄の国家資格でした。
建物を建てるにあたっての知識は、問われませんが、インテリアについては幅広い専門的な知識が問われます。加えて製図試験ではパースの作成、着色などデザインセンスも問われる試験内容です。
試験の難易度としては、建築士ほどではなく、やや難しいレベルとなっています。

7-3. インテリアコーディネーター / 民間資格 公益社団法人「インテリア産業協会」認定

公益社団法人「インテリア産業協会」認定 https://www.interior.or.jp/

インテリアデザインを扱う資格の中で、一番認知度の高い民間資格です。コーディネートの意味の通り、家具やファブリックのなどのインテリア要素を、色柄・素材・形などが調和するように、組み合わせられる商品知識を問われます。

試験は、一次試験が学科試験、二次試験で論文とプレゼインテーションの図面作成が求められます。
受験資格はなく勉強さえすれば誰でも受けられるため、試験の難易度は標準レベルとなっています。

実物を見てみたい!どこで「空間デザイン」の作品を見られる?

ここまで空間デザイナーになるためには、どうすればよいか?を、具体的な項目を挙げて説明してきました。
ですが、何よりもオリジナルな空間アイデアが、自分自身の中から沸き上がってこなければ、空間デザイナーにはなれません。その為には、より多くの空間デザインの作品を、目にすることが必要不可欠です。

しかしながら、空間デザインなどは余程評判にならない限り、世間ではなかなか耳にすることがありません。
その為、空間デザインの作品にであえる、3つの方法をご紹介します。

8-1. 街を歩いてみる

一番安上がりな方法ですが、意識しながら街を歩いてみると、変わった住宅や、ビルなどに気付くことも多いです。建築家の作品などは意外に身近にあったりします。商業施設などが立ち並ぶエリアだと、クリスマスなどシーズナルイベントでの、空間デザインにも出くわす機会も多いでしょう。

8-2. 有名デザイナーの作品を見に行く

4 「空間デザイナー」として有名な人って?でも名前が挙がったような、お気に入りの有名デザイナーがいる場合は、彼らのHPに載っている作品を見て、実物を見に行くのも良いでしょう。年代ごとに作品を追っていくと、作風の変化なども楽しめますね。

8-3. 空間デザインを扱っている、WEBサイトから作品を見つける

特に好きなデザイナーもいないし、新しい作品を見たい!という人もいると思います。そんな場合は、空間デザインの作品や、デザイナーを紹介しているWEBサイトから作品にたどり着くのもおススメです。

8-3-1. 日本空間デザイン賞

https://kukan.design
日本空間デザイン賞とは、毎年開催される日本最大級の空間系デザインアワードです。
その年ごとの、優れた作品と、制作にかかわった空間デザイナーや企業を知ることが出来ます。過去作   品も確認できるので、繰り返し受賞している優秀な空間デザイナーや企業などを調べやすいです。

日本空間デザイン賞は、もともと日本商環境デザイン協会(JCD)https://www.jcd.or.jpと、日本空間デザイン協会(DSA)http://www.dsa.or.jpがそれぞれ行っていたアワードを統合させたものです。
それぞれのサイトにも過去の作品が多数載っており、空間デザイナーへのインタビューなどもありますので、是非チェックしてみてください。

8-3-2. space design concierge

https://space-design.jp/
世界に日本の空間デザインをプロモーションする目的で、つくられたスペース・デザイン・コンシェルジュ。いくつかの空間デザイン協会が、アワードとは関係なくそれぞれの視点で作品を選定しています。
商業施設も多く取り上げているので、街歩きの際の参考にも良いでしょう。

8-3-3. JDN

https://www.japandesign.ne.jp/
「つくる、使う、考える人のためのデザイン情報サイト」として、空間デザインだけでなく、デザイン全般を紹介しています。デザイナーへのインタビュー記事も多く、作品の背景なども知ることが出来ます。

運営会社である株式会社JDNは、 6. 企業で働きたい場合は?業界や会社が知りたい!でも取り上げた、内装ディスプレイ企業である、丹青社の社内新規事業として始まったようです。コンテスト情報サイト「登竜門」の運営もされており、デザイナーの発掘にも貢献している会社の姿勢も垣間見えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?空間デザイナーになるために必要な、空間デザインの知識を、ざっくりとご紹介してきました。
ですが、ここに記載した内容は、あくまで空間デザインの一部の内容に過ぎません。
ご自身で一歩踏み出していけば、また新しい情報に繋がっていくことでしょう。

「空間デザイナーになりたい!」という情熱に勝る原動力はありません。
たくさんの空間デザイン作品に触れて、たくさんの新しい空間デザインを生み出せる、素敵な「空間デザイナー」に、是非なってください!